ベジタリアンキムチ、のこと
Date:Feb 4, 2025 (Tue)

毎年たくさんの方にご購入いただいている、ベジタリアンキムチ。
今日はこのキムチについて書いてみます。
キムチづくりを始めたきっかけ
キムチづくりをはじめたのは、ロンドンに住んでいた2000年ごろのこと。食にとっても興味を持っていた時期で、発酵食、漬物、を食生活に取り入れようと考えていた時期です。
しかし私は漬物がとても苦手で、全然食べたいと思えない。そんな私でも美味しいと思えたのがキムチ、でした。
ロンドンの街中の本屋さんで、韓国料理の本を立ち読み。
そこからキムチづくりをはじめました。
チャイナタウンでなんとか白菜は手に入るものの、白菜をどう漬ければよいのか?も知らず、切ってから塩もみしてみたり。今から思うと、めちゃくちゃな材料で初めてのキムチを作りました。近所にあったインド人マーケットでインドの唐辛子を買って和えたり、西インド諸島の人達が行くマーケットで干しエビを買って入れてみたり、とか。
そして日本に戻ってからは、四谷に住んでいたこともあって、近所に韓国食材店が複数あったので、唐辛子も、イワシエキスも、いろいろと材料を変えては何度も作りました。本もたくさん読んだし、複数の韓国料理の先生のところでキムチづくりに参加したり、と、自分なりの美味しさを作るため試行錯誤。能登の魚醤を使ったり、もちろん「アミ」(エビ)を使ったキムチも、アミの種類をいくつも変えつつ作っていました。
家で食べるものに動物性のものを使わなくなったのは、2013年ごろ。
以来、動物性のものを使わないでどうやって美味しいキムチを作るか?という工夫を重ねてきました。
材料をシンプルにして気が付いたことは、美味しい白菜漬けを作ることが大事、ということ。丁寧に塩をすること、しっかり水が上がるようにすること。この工程をいい加減にすると、発酵を重ねていい味にまとまることが損なわれる、ということを実感しました。
食べ物だけに限らず、どんな仕事も、前工程がしっかりできていなければ次の工程でリカバリーしようとしても難しい。
そして、他の材料選びのおいても、良質の昆布、長期熟成の醤油を使うこと。欠かせないのが「梨」。だけど、甘すぎる梨では発酵しすぎて味を損ないます。
こうして出来上がったキムチは、動物性の極端な旨味を除いた、でもしっかりと発酵の醸し出す美味しさを携えた本来の漬物としてのキムチになりました。
韓国出身の方が「おばあちゃんが漬けていた、雑味のないキムチの味を思い出します」と言ってくださったのですが、まさに、そういう「味の引き算」をして出来上がった、そして「発酵」という自然の営みが創ってくれた味になりました。
芳泉茶寮をはじめてからのベジタリアンキムチ
いつも白菜を育ててくださるのは、地元長南町の農家さん。
初めは10株、20株を購入させていただいていたのですが
「高橋さん達がキムチ作るっていうから、今年はたくさん白菜作ったよ!」
と声を弾ませてくれるのがうれしくて、私達もがんばって毎年少しづつ作る量を増やしてきました。
白菜を割って天日干し、その後塩漬けして2日。
流水で塩を流す作業を3回繰り返したのち、水を切って本漬け。
4-5日馴染ませてしっかり乳酸菌が育ってから袋詰めをして販売しています。
とても手間がかかりますが、こうやって作られたキムチはスーパーに並ぶキムチとはひと味違います。
また、地元の美味しい梨をたっぷり使っていますので、甘みもさっぱり。この梨も毎年お世話になっている農家さんからのもの。
この梨の甘みが乳酸菌を育てる力となり、長期熟成すると酸味がしっかり、
なキムチとなります。
一昨年から、このキムチは「ほぼみち物産株式会社」の仲間たちで作っています。この会社は「ほぼ道の駅ちょうなんプロジェクト」という町おこしのグループメンバーを株主に設立した会社で、町の産品を自分たちの手で生み出していこう!という思いのもと、漬物製造業を取得していろいろな無添加漬物を製造しています。
ベジタリアンキムチについては、芳泉茶寮のレシピをそのまま引き継いで製品づくりをしており、今年は白菜100株をがんばってキムチ漬けにしました。
今年は、昨年の夏の暑さや、雨に流されたり、で白菜の生育が危ぶまれ、秋が暑すぎて結球しない、など、いつもは12月にやるキムチ作業が約1か月遅れて、ようやく製品になりました。
冬は芳泉茶寮にとって「お漬物最盛期」です。
今年も「ベジタリアンキムチ」だけでなく、「大根のもろみ漬け」や「つぼ漬け」、そして昨年好評だった「菊芋の中国風ピクルス」なども作っています。たくあんはあと数週間かかりますが、3月には販売する予定です。
添加物のないお漬物を手にする機会はなかなか無いと思います。
正直なところ、私が苦手だと思っていた「漬物」は、「漬物」ではなかったのです。ただの「調味液漬けの野菜」でした。しかも、アミノ酸調味料や砂糖液に漬かった野菜。
日持ちする商品を作ろうとすれば、そしていつでも変わらない味の商品を作ろうとすれば仕方のないことです。でも、芳泉茶寮で作りたいのはそういうものではない。みなさん安心して食べていただける漬物を、日々の食卓にさりげなくのっているような、そんな存在のものを作りたいと思っています。
ぜひ今年も美味しいお漬物シリーズ、ご購入いただけたら嬉しいです。